センターについて

概要

1. 生命科学研究支援センターの発足の経緯

総合研究棟1

 三重大学は、この数年、生命科学研究を21世紀の最重点研究分野の1つとして位置づけ、その研究基盤の整備と充実に取り組んできました。本学における生命科学関連の教育研究を支援する組織としては、これまで、遺伝子実験施設、機器分析センター、電子顕微鏡センター、医学部附属動物実験施設、医学部RI実験室、生物資源学部RI実験室が設置されており、各センター・施設等において、専任教員による独自の研究が行われ、同時に、学内関連学部の研究者の研究を支援し、多くの成果をあげてきました。しかし、これまで各センター・施設等はその支援すべき研究対象が異なるのみならず、各々が異なる設立経緯と目的を持つため、運用形態から機器取扱規則に至るまで、様々なレベルにおいて、縦割り的、独立的な存在にならざるを得ない側面をもっていました。一方、学問の場としての大学は、専門分野の探求だけでなく、異分野の研究者が協力し、学際的なテーマで学問・研究を発展させていくことが望まれています。また、近年の教育研究の内容は益々多様化しており、各センター・施設等においても、より広範で多様な研究分野に対する支援と研究成果の社会への還元が求められています。具体例としては、三重県の推進する「メディカルバレー構想」においては、生命科学研究の成果は地域社会や産業界への貢献が期待されています。しかし、これまでの各センター・施設等の組織と運用形態は異なり、規模は小さく、施設設備の内容も不十分であるため、変動著しい外況に対応し難く、幅広い視野にたった目的・目標を立てて、これを達成し、時代の要請に応じた柔軟な運営を推し進めるには極めて不利な状況にありました。
 こうした背景の下、平成12年から三重大学学内共同教育研究施設管理委員会を中心に、本学及び地域における多様な生命科学研究を支援し、社会に貢献出来る新しい教育研究推進センターを構築するための討議検討が行われ、平成15年度から従来の各センターと施設を統合し、かつ新しい機能(機能ゲノミクス研究分野等)を付与した生命科学研究支援センターを設立することになりました。

ページトップへPage Top

2. 生命科学研究支援センターの学術的・社会的意義

実験風景

 組換えDNA実験技術の進歩とこれを基盤としたゲノム解析の進展により、生命科学研究は新たな時代を迎えようとしています。これにともない関連する研究技法と装置も飛躍的に進歩し、ヒト・生物研究のための研究手法は従来の生物学や分子生物学の手法の範囲を超え、化学の分野でもっぱら使われてきた分子技術・装置や情報工学技術など広範な分野の技術が総合的に用いられるようになってきました。今後、このような新技術が広範な個別研究においてルーチンの研究手法として使われるようになれば、巨大プロジェクトによるゲノム解析の成果がさらに有効に活用され、有益な学際的生命科学研究が発展していくものと期待されます。このような意味において、機能ゲノミクス研究を中心に様々な角度から生命科学研究を支援する本センターの意義は大きいと思われます。また、遺伝子改変生物や突然変異系統の収集、保存及び配付といった研究資源の系統的収集と共有システムの充実は、現在の生命科学研究の発展に大きく寄与してきました。今後このようなシステムの充実の重要性は益々高まることからも本センターの学術的寄与への期待は大きいと思われます。一方、組換えDNA実験やアイソトープ実験における安全教育及び安全管理のみならず、ヒト遺伝子研究や動物実験においては実験者の倫理教育や対社会対応に関して昨今その重要性がますます大きくなってきていますが、本センターはこのようなヒト・生物研究における安全及び倫理面での管理・教育においても中心的役割を果たすことが期待されています。さらに、生命科学研究のみならず境界領域や他分野との共通研究技術に関する支援を推し進めることにより、新しい学術分野の形成を促すことも可能となります。このような学際的研究の促進は、環境問題、人口・食糧問題あるいは高齢化社会といった今世紀の我が国や地球が抱える諸問題の解決に必要な知識や技術の創造にとって必要不可欠であります。本センターは、生命科学研究を中心とした学際研究を強力に支援するとともに、必要な人材養成を促進することにより、社会的要請に応えようとするものであります。

ページトップへPage Top

3. 生命科学研究支援センターの組織及び管理・運営

1. 組織

 生命科学研究支援センターの組織形態を図1に示します。機能ゲノミクス分野は、従来の遺伝子実験施設に由来する植物機能ゲノミクス部門、従来の医学部附属動物実験施設に由来する動物機能ゲノミクス部門、新たに創設されたヒト機能ゲノミクス部門とバイオインフォマティクス部門から構成されています。ナノ・バイオイメージング分野は、従来の電子顕微鏡センターに由来する電子顕微鏡部門から構成されています。そして総合アイソトープ分野は、従来の遺伝子実験施設RI実験室、医学部RI実験室及び生物資源学部RI実験室からなる放射線化学・安全管理学部門、及び新たに創設された放射線環境生物学部門から構成されています(図1図2参照)。従って、関連する従来のセンター・施設の教職員は、改組以降、全て生命科学研究支援センターの教職員として配置転換されることになりました。

図1 センター組織図
組織図
図2 センター支援概略図
三重大学における生命科学研究の支援体制

2. 各分野・部門の教育研究支援の内容

1. 機能ゲノミクス分野
1. 植物機能ゲノミクス部門

 従来の遺伝子実験施設が担っていた遺伝子関連技術に関する支援、組換えDNA実験に関する安全教育と安全管理に対する指導助言を行うとともに、植物作物の生産性や質の向上を目指す有用遺伝子の単離、機能解析及びトランスジェニック作物の開発に関する研究支援を行います。特に、遺伝学的に同定された有用形質を担う植物遺伝子のポジショナルクローニングによる単離及び機能解析に関する研究を作物ゲノミクス研究として位置づけ重点的に支援します。この様な有用遺伝子の単離・解析には、ゲノム配列情報並びにゲノム科学的研究手法と、QTL解析等の遺伝学的手法の両方を駆使することが必須であり、そのノウハウと必要な設備を提供します。また、単離遺伝子を利用したトランスジェニック植物作成支援及び開放系での生育試験の環境を整備しその管理を行い、この様な実験の安全管理に対して、指導・助言を行うとともに安全教育を実施します。さらに、生物生産分野での共同研究プロジェクトの企画・立案及び対外的調整を行い、学内外における共同研究の活発化に対する支援を行います。

2. 動物機能ゲノミクス部門

 従来の医学部附属動物実験施設の管理、運営、教育、技術支援業務を引き継ぐとともに、大学内、国内研究者の要望に応えて遺伝子改変マウスを作製します。効率的に遺伝子を導入するベクターの開発、組織・時期特異的に遺伝子機能を調節できる遺伝子改変マウスを効率よく作製する新技術の開発、作製技術を持つ人材の育成等を行います。作製された遺伝子改変マウスを精子又は胚で凍結保存し、これらの特性情報を一元的に管理し、依頼に応じてマウスを供給する体制を確立します。また、開発された遺伝子改変マウスの相互利用を促進するため、遺伝子改変マウスの系統化やモデル動物化、遺伝学的・微生物学的品質管理等に対応できる研究支援体制を確立します。さらに、医学・薬学や栄養・機能性食品といった分野での共同研究プロジェクトの企画・立案及び対外的調整を行い、学内外における共同研究の活発化に対する支援を行います。

3. ヒト機能ゲノミクス部門

 最近、約30億のヒトゲノムの全塩基配列の解析が完了しましたが、次に重要となる研究課題は、個々の遺伝子の機能と発現調節の解析です。特に医学研究においては、その成果の社会への還元が重要であり、種々の疾患や病態に関連する遺伝子の探索や遺伝子発現状態を解析するとともに、これまでに蓄積された膨大な疾患関連情報とゲノムの関係を効率良く解析する必要があります。具体的にはSNP(1塩基多型)等の解析を通じて、様々な病気の診断・治療あるいは、各人の個性診断に基づくテーラーメイド医療を可能にします。本学では、血液及び循環器系の疾患や固形癌の創薬や治療に関する高水準の遺伝子研究(治療ゲノミクス研究)が進められていることから、この分野での研究を組織的に推進するための重点的支援を行います。さらに、治療ゲノミクス関連分野での研究プロジェクトの企画・立案及び対外的調整を行い、学内外における共同研究を活発化するための支援を行います。

4. バイオインフォマティクス部門

 本学における、植物、動物及びヒトのゲノム機能研究は、著しく進展しており、そのゲノム情報の蓄積は爆発的に増加しています。一方、国際的にも多くの生物種におけるゲノム機能プロジェクトの発展に伴い、数多くのゲノム情報データベースが構築・公開されています。これら本学におけるゲノム機能情報の解析と国際的ゲノム情報データベースを統合的に解析することにより、今後の本学における機能ゲノミクス研究の発展を図ることを目的とします。この目的の達成には、バイオインフォマティクス関連の施設設備と専門研究者の充実が必要不可欠であり、この充実に向けた取り組みを行います。

2. ナノ・バイオイメージング分野
1. 電子顕微鏡部門

 最近の医学・工学・生物学などにおける最先端研究は、単に各種物質のミクロな構造を観察するにとどまらず、それらの構造を原子や分子レベルで理解し、さらに生理機能や病態と結びつけ、物事の本質を解明することにあります。特に医学の分野では、悪性腫瘍、ウィルス感染症をはじめとする病態の構造的な解明によってあらたな治療法の開発が期待され、生物学の分野でも動植物の改良から環境問題(真珠養殖に障害となるアコヤガイのウイルス解明等)の解決まで広く社会に貢献しています。また工学分野では、カーボンナノチューブ等の先端材料・新素材の物質特性の解明により新しい産業・技術の創出に繋がっています。電子顕微鏡はそれらの研究・教育の活性化や展開に極めて有用であり、生命科学研究者のみならず、学生・大学院生の教育・研究においても重要なのです。

3. 総合アイソトープ分野
1. 放射線化学・安全管理学部門

 本学において、放射線の利用は多岐に渡っており、放射線利用施設は各学部に点在しています。現在、放射線管理における大学全体としての整合性の問題や同一ユーザーが複数の施設を使用する場合の手続の煩雑さが問題となっています。管理体制に整合性をとり、研究を円滑に行うためにも各施設の統合が必要であります。また、環境における放射能測定法や放射性廃棄物の有効な処理方法など技術の確立が急務となっています。このような放射線安全管理に関する学問は多岐の分野に亘っていたが、近年、放射線安全管理学として1つの新しい学問として確立しつつあります。社会のニーズに応えるべく、本学の放射線利用施設は、我が国を代表する放射線管理の会議である日本アイソトープ協会放射線取扱主任者部会・主任者年次大会の開催や放射線安全管理学会設立にも関与してきました。そこで、放射線安全管理を専門に行い、今後ますますニーズが高まると予想される当分野の研究・教育支援を行います。

2. 放射線環境生物学部門

 放射線が人体に有害なことは、良く知られています。しかし、近年、低線量の放射線がむしろ人体に有益であるとの報告(放射線ホルミルシス効果)から放射線の人体への影響、医学への応用について新たな側面から研究が始められています。現在、環境における放射線の生物への影響の分子レベル、細胞レベルにおける理解が必要とされています。これまで、分子医学の分野でも本学は、多大な成果をあげてきました。当分野の研究を専門に行う放射線環境生物実験は、これまでのノウハウを最大限に活かしつつ学内の支援と社会のニーズに対応します。

3. 管理・運営

 生命科学研究支援センターは、次の各種委員会によって管理運営されます。その最高議決機関は学内共同教育研究施設等教授会であり、代表者を議長とし、各センター教授及び准教授から1名(生命科学研究支援センターは2名)選出された者により構成され、本センターを含む学内共同教育研究施設の管理運営に関する重要事項を審議します。また、より具体的事項は生命科学研究支援センター運営委員会で審議されます。この委員会では、センター長を議長とし、各分野長・部門長、センターの専任教授・准教授、各学部から選出された教授により構成され、センターの管理運営に関する基本的事項及びセンターの事業計画に関する事項を審議します。これ以外に、3分野7部門の円滑な運営を図るため、センター長の諮問委員会として、各部門長を構成員とした部門長会議を定期的に開催し、各部門間の意志疎通と調整等が図られます。
 また、本センターにおいては、動物の個体と個体由来資料の取扱いに関する諸問題に対処するため、動物実験倫理委員会を設置し、審議します。
 さらに、各施設(遺伝子実験施設、動物実験施設、電子顕微鏡施設、アイソトープ各実験施設)においては、それぞれの施設専門委員会等及びアイソトープ各施設安全管理委員会において円滑な管理・運営が図られるシステムになっています。

ページトップへPage Top